品川はるな個展「Do not say a little in many words but a great deal in a few」

現在開催中

品川はるな個展「Do not say a little in many words but a great deal in a few」

EUKARYOTE 2F


Information

EUKARYOTEでは9月6日(金)から9月29日(日)の会期にて、品川はるな個展「Do not say a little in many words but a great deal in a few」を開催致します。

品川はるなは1995年に生まれ、2017年に東京造形大学絵画専攻を卒業し、同年に群馬青年ビエンナーレへの入選や、アートアワードトーキョー丸の内2017へのノミネートなど、そのユニークなメディウムの扱いによって表現される作品で注目を集めました。

制作の軸となる「peel off the paint」と名付けられたシリーズは、アクリル絵の具と剥離性のポリエチレンクロスを用いることによって、支持体のキャンバスから色面の膜の一部を引き剥がし、独特の表情を作り出します。その実験においては、フラットな単色から異なった色面を同居させたりストロークを残し混色させるなど、様々な視覚媒体が溢れる現代における絵の具によるイリュージョンや、絵画の構成要素についての問いかけを続けています。

キャンバスから絵の具を引き剥がすという行為は、ある種の暴力性を含みながら、絵画の物質性やメディウムの自律性を強調し、今日の絵画に対する先鋭的な姿勢を鑑賞者に抱かせますが、それと同時に、品川にとってキャンバスは制作者の意図から離れ、各々のイメージを切り取り写す窓に見立てられます。引き剥がされた絵の具は「人がなにかを見て捉え、自身に取り込む瞬間、窓枠の外のイメージが剥がれ落ちる」ことであり、そしてその行いは鑑賞者に委ねられ、「絵と対峙する他者によってそれぞれ繰り返されていく」という眼差しを向けています。ミニマルで大胆な画面の中の繊細さや、瞬間と永続、相反する様々なものの一致を内包するアンビバレントな品川の作品の魅力を、この機会に是非ご高覧いただけますと幸いです。

休廊日

月曜日

オープニングレセプション

2019年9月7日(土)18:00〜20:00


品川はるな

1995 東京都生まれ
2017 東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻 卒業

主なグループ展
2019
「HELLO my name is」EUKARYOTE, 東京
2018
「家とアトリエ」KWorks ,東京
「Beginner’s luck」mime, 東京
「10 COLORS #2」清野美術教室, 東京
「PREVIEW」EUKARYOTE, 東京
2017
青春画廊西陣オープン記念展「open house」青春画廊西陣, 京都
「Transient Color」児玉画廊, 東京
「アートアワードトーキョー丸の内2017」行幸地下ギャラリー , 東京
「Les Fleurs Animėe」GALLERY LARA TOKYO, 東京
「points of departures」ARENA1, ロサンゼルス
「あふれる色彩no.3」ゆう画廊, 東京
「美大生展2017」SEZON ART GALLERY, 東京
「平成28年度第40回東京五美術大学連合卒業・修了制作展」国立新美術館, 東京
「群馬青年ビエンナーレ2017」群馬県立近代美術館, 群馬
「ZOKEI展」東京造形大学, 東京
2016
「UNKNOWNS2016」ギャラリー現, 東京
「山をぬけて」634展示室, 東京

主な受賞
2017
「ZOKEI展」ZOKEI賞
「群馬青年ビエンナーレ2017」入選


品川はるな個展「Do not say a little in many words but a great deal in a few」によせて

絵の具の布

中尾拓哉 

ストラテジックな絵画空間を支えるキャンバスは、縦糸と横糸で編まれた布である。その一次元的な線が織りなす二次元的な平面にジェッソが塗られ、白い下地が準備される。そこに塗られていく絵の具は筆先の一本一本によって、伸ばされ、その線形と線形の間をなめらかに行き来する粘体として、極薄い二次元の層へと広げられていく。絵と布は出合い、一つになる。しかし品川はるなは、そこから「塗膜(the paint)」を「剥がす(peel off)」のである。

一つに合わさったとはいえ、絵の具は本来の意味で線=繊維の集積である布と性質を異にする。絵の具はあくまでも点=顔料の集積であり、その二次元性は粒子がメディウムで接着されただけのものである。にもかかわらず「剥がす」という行為において、それらの粒子は二次元であったことに忠実に、手を取り合ったまま、つまり二次元の物質として振る舞ったまま、三次元の方向へと離れ離れになり、折り重なり、しわとなる。品川の好むパールのメディウムが、光を立体的に反射させるなか、かつて一つであったキャンバスは、以前の白いままの絵画平面をあらわにしている。このとき、支持体と構成要素のフォームが、あっさりと反転していることに気づく。すなわち、木枠に張られた画布の上で、絵の具が布のように振る舞おうとしている。

絵画の歴史において、布は絵になることを欲望してきた、と言うことができるとすれば、品川の絵画においてはその関係性が反転し、絵が布となることを欲望する。まるで、カラーフィールドを剥がせば、一つであった絵の具と布の関係は、何も描かれていない真っ白で純粋な平面性と、フォーマリスティックな形式的諸要素へと還元される以前の、絵画におけるイリュージョニスティックな演劇性をやどすジョーゼット幕へと変貌する、とでもいうように。つまり、それは絵画を平面性へと還元するフォーマリズムのもとでミニマル・アートへと批判的に接続された演劇性が、それ以前のイリュージョニスティックな演劇性と同居している、という状態である。

抽象表現主義のような塗膜が、ルネサンス期のような大理石に彫られた布の折り目のように、荘厳で、キッチュな輝きを放っている。私たちは、この二次元性と三次元性において、絵の具の集積とキャンバスの矩形ではなく、ゆえにオールオーヴァーなカラーフィールドでも、リテラルな演劇性でもないもの、すなわちコンテクスチュアルな絵の具と布の反転に、2つの物語——フォーマリズムとイリュージョニズム——の間で葛藤したままの、絵の具とキャンバスの関係に直面する。

品川が、ストラテジックな絵画空間をあまりにシンプルに反転させるので、私たちは絵画の見方などというものは、すっかり忘れてしまうかもしれない。そうして、かつてその表面を切り裂かれ、開かれた絵画空間ではなく、極薄い平面の上で切り取られ、剥がされた「絵の具の布」によって、今度は下層と上層の間で愛憎を含みながらも、相思相愛な(あるいは一つになることを永遠に許されない)絵の具と布の雄弁で、しかしあえかなる位相に出合うのだ。


MORE EXHIBITION


“EUKARYOTE”は、2018年に東京の神宮前に設立したアートスペースです。美術の発生より紡ぎ続けてきた現代の有形無形、その本質であり、普遍的な価値を持つ作品や作家を積極的に取り上げ、残していきます。


PAGE TOP