菅原玄奨個展「湿った壁」

菅原玄奨個展「湿った壁」

EUKARYOTE


Information

EUKARYOTEでは、2024年1月26日(金)から2月18日(日)までの会期にて、菅原玄奨による個展「湿った壁」を開催いたします。

菅原玄奨は昨年からFRPを主な素材とする従来の制作の傍ら、作陶に用いられる粘土を新たな素材として、素焼き=テラコッタでの表現に取り組んできました。それは菅原自身の原初的な体験をもとに、粘土の触覚的な要素と、作品が成り立つプロセスを可視化することで、彫刻の表面性を再考する試みとなっています。これまで消費的な社会で生きる現代人の姿を工業製品で用いられるFRPによって形づくり、移ろい続ける表層や実態の不確かさを表してきた作家にとって、本展はより彫刻の根幹へと歩みを進める転換点とも言えるでしょう。

菅原によるテラコッタの技法において特徴的なのは、陶芸や工芸の文脈ではなく、粘土の持つ性質である、水分を含み、乾燥させることで形を保持できるシンプルさ、それを型に込めることで出現する“込め跡”を生かし、自身の触覚そのものを具現化させるための彫刻素材として扱う点です。これまでFRPを素材に行ってきた制作プロセスと同じように、一度塑造によって型を成形したのち、最終的に焼成される粘土を型の内側に手で込める作業を行います。それによって、新たな像の表面には型と粘土の圧迫によるひび割れ等が生じ、内から外へ水分が蒸発していく自然現象的要素と焼成を伴うコントロール外の現象とが相まり、塑像のリアリティ、内圧と外圧のせめぎ合いをセンセーショナルに成り立たせています。

本展で作家は、新たな技法を探る一方で“中間”というキーワードにも着目しています。新作の人物像は、貝殻に直接耳を当てているのではなく、これから当てようとしているのか、 あるいは当て終わったのか、定かではない状態で静止しています。巻貝を耳に当てると波の音が聞こえるという言説は、実は自分自身の鼓動や血流の音が反響しているとも言われており、ここでも内と外の要素が錯綜する菅原のストーリーが織り込まれています。 今回の展覧会タイトルに含まれる“壁”を、外側と内側の狭間にある存在として捉えると、像そのものや動きにもその前後の“中間”であることを含ませており、私たちが刻々と身を委ねている環境や事象においても言及されているように思わせます。

休廊日

月曜日

デザイン

星加陸

照明

伊藤啓太


菅原玄奨

1993 東京都生まれ
2018 東京造形大学大学院造形研究科修士課程彫刻専攻修了

近年の主な個展
2021「Superficial Sensation」Gallery FOMO /台北
2020「anonym」EUKARYOTE /東京
2017「東京の人」Hideharu Fukasaku Gallery Roppongi /東京
2016「invisible」TAV gallery /東京

近年の主なグループ展
2023「遊歩する分人」GASBON METABOLISM /山梨
「いつも 話すように」照恩寺 /東京
2022「遊歩する分人」MA2 GALLERY /東京
「echo chamber」EUKARYOTE /東京
「The Fairest Fairs # 1」TAV gallery /東京
「HAVE YOU EVER SEEN A GHOST?」TOKYO INTERNATIONAL GALLERY /東京


MORE EXHIBITION


“EUKARYOTE”は、2018年に東京の神宮前に設立したアートスペースです。美術の発生より紡ぎ続けてきた現代の有形無形、その本質であり、普遍的な価値を持つ作品や作家を積極的に取り上げ、残していきます。


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