EUKARYOTE
EUKARYOTEでは2021年9月17日から10月10日までの会期にて、三回目となるアートコレクターとの共同企画展、「Moving Images」を開催いたします。
今回はアートコレクター・宮津大輔氏の協力のもと、磯村暖、岸裕真、THE COPY TRAVELERSの3者のアーティストによる、映像作品に焦点をあてた展覧会となります。
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AI(人工知能)の発達・普及や国外からの労働力受容、更には複製技術の進展は、私達の生活をより豊かで便利なものにしています。
現在RPA(仮想知的労働者)は、本来人間が担っていた大量の定型業務をミスすることなく効率的に処理することで、「働き方改革」を推進する原動力となっています。また、無料の動画作成及びWebデザイン・サービスなどは、AIによる表現生成により成り立っています。一方で、シンギュラリティ後の世界を想像した時に、機械と共存共栄する「ユートピア」のみならず、人類が機械に支配される「ディストピア」の可能性が、未来に暗い影を落としていることも否定できません。
便利な都市生活を支えるコンビニエンス・ストアや増え続ける高齢者介護のために、外国人労働者の受け入れを認める「改正入国管理法」が、数年前には可決・成立しています。
多様性の時代を謳いながら、異なるバックグラウンドや生活習慣、思想を有する人々、更には機械と衝突することなく、相互理解・共生を図るには一体何が必要なのでしょうか?
マーシャル・マクルーハンは、複製技術が均質的で画一的な時空間の形成を促すと論じました。同技術の進化は最早私達の想像を遥かに超え、iPS細胞に代表される再生医療への貢献のみならず、クローン羊に端を発し、今や同性カップルが子を持つことすら科学的には可能としています。しかし、こうした先端技術の利用・実現には、避けては通れない宗教的あるいは倫理的な問題が横たわっています。
私達が生きる2021年には、こうした複雑な論点を含む”後回しにできない課題”が少なからず存在しています。賛成か、反対かといった二項対立から脱却し、多層的に思考することがますます重要になる中、優れた「Moving Images」は、必ずや多くの示唆を与えてくれることでしょう。
宮津大輔
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本展開催にあたって、宮津大輔氏は映像というメディアについて、現在最も身近な媒体であり、その表現もスマートフォン(以下、スマホ)やPCなどによって、誰にでも可能性が開かれていると語りました。
例えば中東や中央アジアなど紛争や内戦が頻発している地帯においては、スマホ搭載のカメラがもっとも手軽なツールであり、映像は即効性のある表現媒体であると言えます。所謂アートとして想起されがちな絵画は、場所の安全を確保した上で画材を準備し、絵の具の乾きを待たなければなりません。さらには日本に暮らす私たち、そして世界の大多数を占める人々の日常生活は、日々デジタルデバイスの画面を通じたYoutubeやInstagramなどの動くイメージで溢れています。
出展アーティストの3者について、磯村暖は、生きる時代や社会によって変わってしまう人々の境遇やその文化のあり方に関する比較やリサーチを通して絵画やセメント彫刻、映像インスタレーション、時にパフォーマンスといった様々な表現を行い、あらゆる社会に潜むうる画一性に問いを投げかけます。一方、AIに対し、使役するのではなくもう一つの知性として共作者の関係性を見出す岸裕真は、テクノロジーの発展とともに変化していく人間の知覚と両者との関係性について探っており、岸とAI技術が可能にする斬新なイメージは、かつてない違和感を私たちに提示します。
京都を拠点に版画を専攻していた3人の作家が集まり、コピー機を使った実験的活動からスタートしたTHE COPY TRAVELERSは、既製品や図版の断片など、世に散らばるイメージを横断的にコラージュ、サンプリングし、出現するイメージとともに複製芸術の概念をも拡張させ、今日的なテーマに反映しています。
世代や環境、制作手法、テーマ、いずれも異なる3者ですが、映像を用いる共通点を持ち、それぞれの作品が私たちに訴えかけるメッセージは、その根源で複雑に絡まり合っています。
月曜日
HOO VOE
隅本晋太朗
1992 東京都生まれ
2016 東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
近年の主な個展
2020「OFF THE SIDELINE」EUKARYOTE / 東京
「んがんたんぱ」銀座 蔦屋書店GINZA ATRIUM / 東京
2019「Hell on Earth」UPLINK吉祥寺 / 東京
近年の主なグループ展
2021「ストレンジャーによろしく」銭湯梅の湯 / 石川
「Slow Culture」京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA / 京都
「居場所はどこにある?」東京藝術大学大学美術館 陳列館 / 東京
2020「都市は自然」セゾン現代美術館 / 東京
2019「TOKYO 2021 -un/real engine ―― 慰霊のエンジニアリング-」TODA BUILDING / 東京
「City Flip-Flop」空總臺灣當代文化實驗場 / 台北
「The Middleman, the Backpacker, the Alien Species, and the Time Traveler」耿畫廊 / 台北
1993 生まれ
2019 東京大学大学院工学系研究科修了
2021 東京藝術大学先端芸術表現科修士課程在籍
個展
2021「Neighbors’ Room」BLOCK HOUSE / 東京
グループ展
2021「絵画の見かた reprise」√K Contemporary / 東京
2020「荒れ地のアレロパシー」MITSUKOSHI CONTEMPORARY GALLERY / 東京
「富士山展3.0 -冨嶽二〇二〇景」T-ART HALL / 東京
2019「Eureka展」Gallery Water / 東京
2014 京都を拠点として活動する加納俊輔、迫鉄平、上田良によって結成。
近年の主な展覧会
2021「eeny, meeny, miny, moe | green」eN arts / 京都
2020「THE COPY TRAVELERSの遅れてきた速報!!」Meets by NADiff / 東京
「real SOU#5 Walking-」茨木市本町センター / 大阪
「JR EAST meets ART@JR Takanawa Gateway Fest / 東京
2019「MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影」東京都現代美術館 / 東京
「RAKE UP!」HOTEL ANTEROOM KYOTO l Gallery9.5 / 京都
「THE COPY TRAVELERSのA室」Galerie16 / 京都
「雲型定規がヤマをはる」Sprout Curation / 東京
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