EUKARYOTE
EUKARYOTEでは2023年5月12日(金)から6月4日(日)までの会期にて、菊池遼による個展「parousia」を開催いたします。
菊池にとってEUKARYOTEで2回目となる本個展では、これまでの主な作品シリーズである〈void〉と〈idea〉、そして、そこからの新たな展開となる〈parousia〉を発表いたします。「parousia」とは、キリスト教においては、天に召されたイエス・キリストが、世界を裁きに再び地上に降りてくることを指しますが、プラトン哲学においては、イデアが個別具体的なかたちを取って現象することの意味を持ちます。菊池は、プラトン哲学における意味に基づいて、この語を選択しています。
菊池の現在に至るまでの制作の軸となっているテーマは、主観が言葉に基づいて世界を切り分け、それによって事物が現象するという「分節行為」についてです。
〈void〉においてそのテーマは、切り分けられることによって生じる事物のあり方を表現するかたちを取りました。主観が世界を切り分けることで事物が生じるという菊池の立場において、私たちが知覚する事物は、主観の切り分け方に依存した弱く儚く在るものとして考えられています。そうした事物の在り方が、画面に近づくと図像が点の列に還元され消失してしまう視覚効果によって表現されています。
続く〈idea〉では、切り分ける行為そのものに焦点を当てるように形を変えていきました。現存する人類最古の造形物としての洞窟壁画を、世界への分節行為の象徴として捉えた菊池は、そこにさらなる分節行為(輪郭線を引きなおす)を重ねることで、自己言及的に分節行為そのものに焦点を当て、分節体系の読みかえ、あるいは書きかえを試みました。
今回、新たに発表する〈parousia〉では、これまで〈void〉で表現してきた東洋思想にも繋がる図像に対し、輪郭線を引きなおすという〈idea〉で確立した手法を用いて制作が行われています。そこには、菊池が〈void〉において表現してきた事物に対する考え「主観の切り分け方に依存した、弱く儚く在るもの」に加え、〈parousia〉における「その事物をかたちづくる輪郭は、世界をどのように切り分けたとしても常に輪郭であるため、事物よりも輪郭の方こそが実在する」というメッセージが込められています。そうした菊池の思索の示された新作では、平面に止まらず、新たな展開として空間を用いたインスタレーションも行われます。新たな試みの行われる本個展を、是非ご高覧いただけましたら幸いです。
月曜日
HOO VOO
菊池遼個展「unreachable」2023/05/22 – 2023/06/10
GALLERY MERROW
106-0031
東京都港区西麻布3-24-23
CUBE西麻布1F
1991 青森県生まれ
2015 東京造形大学 造形学部美術学科絵画専攻 卒業
2017 東京造形大学大学院 造形研究科美術専攻領域 修了
2023 東京造形大学大学院 造形研究科造形専攻美術研究領域 博士後期課程 修了
主な個展
2022「東京造形大学 博士審査展」東京造形大学附属美術館 /東京
2019「OUTLINES」EUKARYOTE /東京
2017「無/(分節)」Frantic Gallery /東京
近年の主なグループ展
2022「can (not) reach」EUKARYOTE /東京
2021「体の空間と引力」東京造形大学 /東京
「Born New Art」渋谷スクランブルスクエア /東京
2020「EUKARYOTE POP UP EXHIBITION」WHAT CAFE /東京
「appropriate distance」銀座 蔦屋書店アートウォール・ギャラリー /東京
「DELTA Experiment」TEZUKAYAMA GALLERY /大阪
「ホルベイン・スカラシップ成果展」佐藤美術館 /東京
「for better (or) for worse」EUKARYOTE /東京
「Visionary Vision」MEDEL GALLERY SHU /東京
2019「LUMINE ART FAIR」Lumine 0 /東京
「雲に杭を打つ」東京造形大学 /東京
「菊池遼|香月恵介 イメージとの距離」関内文庫 /神奈川
「もの・かたり – 手繰りよせることばを超えて」 ヒルサイドフォーラム /東京
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