Super Circulation / 超循環

Super Circulation / 超循環

EUKARYOTE 1F, 2F, 3F, R


Information

この度、現在内装工事中の新ギャラリー「EUKARYOTE (ユーカリオ) 」にて、1月27日 (土) から2月4日 (日) まで、秋山佑太、カタルシスの岸辺による企画展「Super Circulation / 超循環」を開催いたします。

本展は、ギャラリーの内装工事と並行して開催される展覧会であり、神宮前のビル一棟の1階から3階までの3フロア及び屋上にて、建造と制作の原材料の “循環” を主題としたインスタレーション作品が発表されます。

建築の内装工を20年にわたって生業とする秋山佑太の個人的体験に端を発する本展のテーマは、新ギャラリーの所在地である神宮前に近接する新国立競技場の建設へと紐付かれ、美術と建築の領域を重ねることで、実生活で感じる意味がより大きな存在の一部となる状況が生み出されます。

秋山佑太はSEZON ART GALLERYにて、”建築/土木/震災/オリンピック” をテーマに都市の豊かな仮設を試みる「ground under」展を企画。カタルシスの岸辺は、映像素材を量り売りする実験的屋台の出店や、プレイヤーが現代美術作家となりオブジェクトを制作するボードゲームの試遊イベントを開催しています。オルタナティブなアートシーンを象徴する気鋭作家がギャラリー準備期間に開催する実験的試みを是非ご高覧ください。

オープニングレセプション

2018.1.27 (土) 18:00-20:00


Artist

秋山 佑太
美術家・建築家。1981年東京都生まれ。展覧会の空間設計と建造物を扱う活動。「移動」「集積」といった方法で、複雑な時を刻んで来た建物に「地霊」を呼び起こす作品を制作。これまでに「BARRACKOUT」展 (旧松田邸 / 2016)、「ground under」展 (SEZON ART GALLERY / 2017) を企画。

カタルシスの岸辺
2017年4月に荒渡巌、海野林太郎らによって企画された、複数の若手美術作家による実験販売活動。ある時は作品未満のマテリアル (物、音、映像等) にそのまま値段をつけて対面販売し、またある時はコイン投入式の映像視聴筐体を制作し、映像の対価を直截的に要求する。参加作家達の「作品制作」の陰で密かに企む狂宴は、野卑で、不躾で、しかし確かな情熱を持つ。


Statement

大型ホームセンター行くと、木材コーナーにパーチクルボードという、木の小片に合成樹脂接着剤を塗布し一定の面積と厚さに熱圧成形してできた、木質ボードの板状製品が置いてある。原料としては主に産業廃棄物として回収された解体廃材である。私はホームセンターに行く度に、今でも、あの光景を思い出す。それは酷いトラウマとして、そして夢の様な冒険記として記憶に深く残っている。

この仕事をはじめてもう少しで20年が経とうとしている。十代の私にとって建築現場は憧れの地であった。自分がいつか建築家になって歴史に残る建造物を建てる日を夢見て、工事現場の派遣アルバイトを高校生の私は始めた。その殆どは荷揚げ作業や掃除作業だが、学校の教科書では学べない経験ばかりであった。体力的にはきついが、学べて稼げるのであれば、必要なだけ働くつもりでいた。SF映画のワンシーンのようなあの光景を体験するまでは。

そこは粉塵で視界が全く無い深い人工の洞窟の中。その洞窟の正確な寸法は覚えていない。直径十メートル以上はあった様に思う。私たち作業員は、大袈裟なマスクとゴーグルをして、地上から階段で深い底まで降り、ブラシで大鋸屑の掃除をする。洞窟の上部には巨大なミキサーがある。産業廃棄物処理認定を受けたトラックが廃木材をそのミキサーに投げ込む。ミキサーで粉砕された木のチップはパーチクルボードの材料になるらしい。そこで働く在中作業員が昼休みに教えてくれた。この日は体の器官中に粉塵が入り込んだ感覚で、まともに昼飯が喉を通らなかった。身体の危機を感じて食事どころではなかった。二年続けた派遣のアルバイトはこの日で辞めた。次の日も同じ産業廃棄物処理工場の地下清掃が派遣先だったからだ。身体が洞窟を拒否する感覚と恐怖で電車に乗れなかった。

私が美術をやる意味は、あの光景を忘れないで生きていく事と近いのではないかと思っている。廃棄の先に生産された一枚の圧縮されたボードと、あの経験を切り離さなさずに生きていくこと。あの洞窟は、私の好奇心を餌に、体を疲弊させ意識範囲が狭くさせ、感覚が自己把握できない状態に陥りさせた。しかし、朦朧とした私は身体の危機を感じつつも、何か興奮していた。廃棄物の末端の世界に私はいた。それはメトロポリスの世界か。ブレードランナーの世界か。アキラの世界か。

いま施工中の工事現場まで千駄ヶ谷駅から歩いている。目の前には新国立競技場の建設が急ピッチで進んでいる。もう後戻り出来ない状況から、開催への道を推し進める祭典への高揚する気持ちが湧き上がる。モニュメンタルな建造物は完成の瞬間にオーガズムに達するのではない、建設中こそ最も興奮する。あの前の国立競技場は何処へ行ったのか。何処へ廃棄されたのか。そんな過去の競技場の行方と、実現しなかった競技場へ想いを馳せながら、缶珈琲で冷えた手を少しばかり温めて現場に向かう。

秋山佑太


MORE EXHIBITION


“EUKARYOTE”は、2018年に東京の神宮前に設立したアートスペースです。美術の発生より紡ぎ続けてきた現代の有形無形、その本質であり、普遍的な価値を持つ作品や作家を積極的に取り上げ、残していきます。


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